序 - 麻酔科研修っていんでないかい -


 当科は1975年の開設以来、麻酔学を研修される初学者のために独自の「麻酔科研修の手引き」を作り、改訂を重ねて来ました。当初は2年目までの麻酔科研修医、あるいは素養として麻酔を3ヶ月間研修する外科系医師を想定し、当科での診療を具体的に記すことを目標に編集されてきました。

 1998年に改訂された第6版はWeb上に公開され、小改訂が繰り返されました。しかし利用していたサーバーが企業買収され、ここ数年は更新できない状況が続いていました。

 2004年4月から導入された新臨床研修制度に伴い、当院では2ヶ月間の麻酔科ローテート研修が必修となりました。研修医にはWeb版の手引きをCDに焼き配布していましたが、それほど利用されている様子はありませんでした。CD手引きの利便性の低さ、教科書やマニュアルの類が豊富に出回っていること、何よりも、これまでの手引きが「2ヶ月」の短期研修に即したものになっていないことがその原因ではなかろうかと分析をしていました。さらに研修医からは、指導医の麻酔がそれぞれ個性的で、研修医に不安と不信を与えているとフィードバックされるに至りました。

 2008年4月、指導医間の熱い討論の末、「2ヶ月」研修を意識した「手取り足取りマニュアル」が構想され、全面改定に踏み切りました。

 今回の改訂では、「VSOP(Very Special One Pattern)」と内部的に称する麻酔法を詳細に記しました。研修開始1ヶ月間、研修医との麻酔は「VSOP」のみとし、指導医それぞれの「個性の麻酔」「こだわりの麻酔」は封印することとしました。また研修中の心得を「麻酔科医の生活マニュアル」として詳述しました。サイドバーには、You Tube 上に公開されている麻酔関連動画などを配しました。

 2ヶ月の研修を終えた初期研修医の皆さんが(いや、たった一人だっていい)、「麻酔って、案外おもしろそう」「後期研修、麻酔科もいんでないかい」と思っていただけたら、我々にとって、これほどうれしいことはありません。

 さぁ、麻酔科研修の始まりです。

2010年5月

副院長:高桑良平(83年卒)
麻酔科科長:藤原幹人(82年卒)
手術室部長:盛永直樹(89年卒)
ICU室長:大方直樹(89年卒)
麻酔科外来担当医長:古明地恭子(91年卒)
スタッフ:中明結花(04年卒)
スタッフ:川村純一郎(73年卒)
パート:寺坂美緒(99年卒)
嘱託:小田代政美(65年卒)


Version 1.5.0 2010.05.14 改訂
Version 1.0.0 2008.08.31 初版